ミルフォードサウンド

自動車販売店の広報誌

車庫証明や自動車の登録の仕事をほぼ50年間行っている。途中数年の中断をはさみ半世紀になったが、いまだに仕事をいただきに行くときなどに楽しみにしていることがある。大きなディラーになるとメーカー系の広報誌がおいてあるが、バラエティーに富んだ記事が載っている。私は旅が大好きなので旅のレポートはつい熱中して読んでしまう。

ニッサンの系列店から定期的に仕事をいただいていたが、ある日ロビーにあったPR雑誌でニュージーランドのミルフォードサウンドに関する記事を読んだ。「世界でもっとも美しいフィヨルドとトレッキングコース」というタイトルだった。もともとニュージーランドに興味を持っていたので美しい写真を見ながら、ぜひ行ってみたいという想いにとらわれた。

遠い! 遠い・・・

これまでニュージーランドには3回行っているが、やはり遠い。一人でミルフォードサウンドへ行ったときはこんな感じだった。白鳥台にある自宅から、家内に車で送ってもらって東町の道南バスターミナルへ。そこから千歳空港行きのバスに。千歳空港からコリアンエアラインで韓国のインチョン空港へ1,400キロのフライト。(海外にいくときにコリアンエア―ラインをよく利用していた。インチョン経由だと直行便より全然安かった)

インチョンからニュージーランド最大の街オークランドへロングフライト。9,600キロほどある。オークランドから観光方々バスでロトルアという温泉と湖のある街へ230キロ走る。ここは洞爺湖温泉によく似ている町だと思った。湖も洞爺湖によく似ていた。ただ羊蹄山のような山が背景になく、故郷の洞爺湖のほうが素敵かな。

ここから小さな飛行機で南島にあるクイーンズタウンという街まで1,000キロ近く飛ぶ。ミルフォードサウンド観光の拠点となる街だ。そしてさらにバスでテアナウという街まで走る。約170キロ。世界で最も美しいとされているミルフォードトラック(いわゆるトレッキング)の起点となる街だ。
ここまでくれば着いたも同然だが、それにしてもやっぱり遠いなぁ・・・

天候にも恵まれ申し分ないクルージング

ここまで来たけれど

ミルフォードサウンドまでは、さらに氷河が侵食してできた広大な谷を下ってゆかなければならない。パンフレットには世界で一番美しい道と書いてある。ついに着いた先でフィヨルドを巡る船に乗り込んだ私は不思議な感覚にとらわれていた。全てがあのロビーで観た写真のとおりだ。でも・・・ 

壮大な光景が広がっていた。深くえぐられた巨大な入り江。迫るようにそびえる山々。1,000メートルを超す断崖から降り注ぐ滝の数々。その多くは海面に着く前に霧になってしまう。野生のアザラシなども眼前にいる。海水と淡水が交じり合わないで層になる特殊な水域のため、深海生物がたった深さ10メートルの海中展望塔で容易に観察できる。雨がひじょうに多い地域だというが天候も申し分ない。

でも、なんとなく物足りなく感じている自分がいた。これってなぜなのだろう。今考えると、あまりに想像していた光景と同じ世界が眼前に広がっていたので、かえって驚きが無かったのかもしれない。雨や濃い霧に視界が遮られていたなら想像力で補い、違った印象が残ったのかもしれないと思う。

旅好きな人の心は難しい。